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にっぽん丸 ワンナイトクルーズ トリックサスペンス劇場

 

2004年1月18日(日)~19日(月)

 

東京座プロデュースが豪華客船でのサスペンスに挑んだ !!

客船「にっぽん丸」を舞台とした華やかでクールな観客参加型ミステリーは、
歌ありダンスありイリュージョンありの一大エンターテイメントとして大成功。
船と海の専門雑誌、隔月刊『クルーズ』にその模様が掲載されました。

■ 船上で殺人事件発生??

「殺人事件」とはなんとも物騒だが、これは商船三井客船が企画した「にっぽん丸トリックサスペンス劇場」の一幕である。まるで「にっぽん丸」という大きな劇場の中で、1泊2日にわたってフィクションの世界にどっぷりと浸かった、不思議な感覚のクルーズだった。

                             

                            文と写真/渡辺祐美子

■ 事件編

事件は横浜を出港してまもないにっぽん丸の船上で起きた。

船内では、日本初上陸というハンガリーの化粧品「アナコンダ・コスメティックス」の発表パーティーが行われている。ダンス、バイオリン独奏、そして船内に響き渡るカンツォーネの歌声。その美声に酔いしれるのもつかの間、美人マジシャングループWiZのイリュージョンショーが始まった。華麗なマジックに歓声と拍手が沸き起こる。そして「ミス・アナコンダ」の山下ゆきがマジックに参加。ゆきの身体がふわっと浮き上がり、場内から歓声が上がったそのとき、会場に銃声が響いた。

【写真上】
銃声とともに山下ゆきがどすんと倒れ落ちた。司会者が叫ぶ。
「容疑者はあなた方全員だ!」
そう、観客であったはずの私たちも、すっかり事件に巻き込まれてしまったのだ。

【写真下】
そこへ刑事が登場!
この刑事、休暇を利用して、息子と一緒ににっぽん丸のワンナイトクルーズに偶然乗り合わせていたのだ。刑事は、トリックが仕掛けられた時間を「ショーが始まる前、ディナーの時間帯」であると分析。おかげで、食事をしていた乗船客の疑いは晴れた。

 

【写真左】

ハンガリー大使館員のアンドラーシュ樹理は、ハンガリーと日本との友好を訴える。
彼女は、元「ミス・アナコンダ」だ。

「乗船客役」だった観客も、ここからは「探偵役」として事件に関わることになる。
犯行時間にアリバイがない人物は、司会者、ハンガリー大使館員、アナコンダレディ、スタッフらの計8人に絞られた。嫉妬、怨恨、男女関係のもつれ……など、殺害の動機は全員に当てはまる。刑事は船内を駆け回り、殺害方法も解明する。マジックショーで仕掛けられたピアノ線を司会者が引くと、銃が発砲する仕組みだった。ピアノ線がらせん状に巻かれているなど、さりげなく謎を解く鍵が提供される。

 

……刑事は、犯行のトリックと犯人を、翌朝の「解決編」公表すると約束した。そして「探偵」である観客にもヒントの場を提供してくれると言う。公演後、「容疑者」たちは名札を付けて船内のあちらこちらに出没する。熱心な「探偵」たちの「容疑者」に対する追及は、ダンス会場やダイニング、さらには大浴場(!!)にまで及び、夜は更けていくのであった。

 

……一体、犯人はだれだ?

■ 解決編

犯人は大使館員のアンドラーシュ樹理。
そして、スタッフリーダーの鈴村は共犯だった。

【写真上】
「ハンガリー共和国のために、私が魂を込めて結成した愛するチーム。
それを、あの女にめちゃくちゃにされたのが許せなかったの……」
樹理が船上でもくろんだ完全犯罪は、偶然乗り合わせていた刑事によって打ち砕かれた。
しかも、にっぽん丸には250名もの敏腕探偵までが乗船していたのだ!
犯人を投稿した人のうち、正解者はなんと約8割。刑事は後で、こう語っている。
「探偵たちは、この事件を解き明かそうと必死でした。僕が大浴場で汗を流していたときでさえ、“それで、犯人は一体だれなの?”なんて質問責めにあったり……。
みんなスッポンポンだというのにも関わらずね」(笑)
なにはともあれ、事件は一件落着。この後、正解者の中から抽選で10名に、賞品の「にっぽん丸特製ワイン」が贈られた。

■ 犯人を割り出した決め手とは?
  にっぽん丸の名探偵に聞く

 

【写真左下】
名探偵/石川美穂さん
犯人と共犯者を突き止めただけでなく、犯人と断定した経緯までも完璧に解いた石川さん。「左利きであることと、鈴村が樹理の部屋に行ったこと、そして樹理は銃を入れた箱がジュラルミンであることを知っていたことが決め手になりました」
商品を手に、友人の中西知子さんとニッコリ。

【写真右下】
らせん状に巻かれたピアノ線。左手で巻くと反時計回りに巻かれることから、犯人は左利きだと導かれた。

■“副船長”のスキャンダル、海に飛び込む共犯者……。
  にっぽん丸の懐は深い!

 

「演っていて最高に面白かったですよ! こういった空間はほかにないですからねぇ」
ドルフィンホールの4、5階観客席を所狭しと駆け回り、エネルギッシュな芝居を見せてくれた刑事役の木内大介氏。劇団東京座の主催者でもある彼は今回、出演・脚本・演出のすべてを手掛けている。
木内氏が「客船に乗船したのは初めて」というのが不思議なほど、今回の脚本は船上であることが生かされた作りだった。
特に強烈なインパクトを残したのが、乗船客のアリバイを調べるくだりだ。観客席の中にただ一人、アリバイのない女性(最近離婚をしたばかり。その慰謝料で乗船した、という設定)がいた。刑事から疑いの目を向けられた彼女は、なんとその時間に「副船長」を自分のキャビンに誘いこんでいたことをぶちまけたのだ! この副船長、「これで、もうクビだぁ……」と叫び、会場からは情け容赦ない笑いを買うのだが、芝居の幕が閉じた後にも再度登場し、カジノやダンスなど実際の船内インフォメーションを力無くアナウンスするのであった。この細かい演出は、芝居の終了後も「探偵」である観客が「刑事」や「容疑者」を好きなように追及できる、という適度な距離感を作りだす効果があった。
しかし、この「副船長のスキャンダル」、実際の船上を舞台にした芝居にしては、少し過激だったのでは?! この脚本にGOサインを出した、にっぽん丸のクルーズディレクター・鈴木則幸氏の見解はこうだ。
「極端に不都合になることでなければいいんですよ。にっぽん丸には“副船長”はいないですしね(笑)。演者側と主催者側の“戦い”というのはあってしかるべき。お互いの気持ちを理解し合いながら妥協点を見いだし、切磋琢磨して作り上げていくというのがクリエイティブな仕事なんです」
このほか、「共犯者」が船から海に飛び込んで自殺を図る場面もあった。このシーンにしても先の副船長が叫ぶ場面にしても、これがテレビ番組だったのなら、きっとここはシリアスな場面であるに違いない。しかしここでは、会場から大きな笑いが起きたのは面白い感覚だった。 
観客と演者が、まるごと「客船」を「劇場」として共有することにより、テレビとも陸の劇場とも異なる、クルーズならではの関係性のエンターテイメントの新境地が、今ここに切り開かれたのかもしれない。次はぜひ、にっぽん丸で東京座の喜劇を観てみたい!

 

【写真下】
劇団東京座は、元・劇団俳優座の木内大介(きない・だいすけ)と、現・俳優座女優の鶉野樹理(うずの・じゅり)が結成した演劇ユニット

 

【写真上】
今回の出演者は総勢22名! 右上はクルーズディレクターの鈴木則幸氏

 

【写真中央】
「にっぽん丸」を舞台に見立てた観客参加型の演劇は、意外にも商船三井客船初の試みだった

劇団東京座

( 日本音楽企画 内 ) 
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